万年筆LIFE

万年筆はどこへ向かう?

2025年5月12日

日本の万年筆は斜陽産業といわれて久しいですが、近年、各メーカーが万年筆の値上げを敢行しています。私はマーケッターでもなんでもないのであくまで個人的な感想というか、思いなのですが、これは単純にコスト増を価格に転換しているだけではなく、戦略的な話だと感じていて、各万年筆メーカーは生き残りを模索しこれまでのマス市場からニッチ市場へスイッチしているのではないか。「量」から「質」を追求し、その価値のわかる人たちを顧客にしようとしているのではないかと思っています。

一例ですが、パイロットの最高峰モデルであるカスタムURUSHIは2023年まで96800円(税込)でしたが、2024年1月から121000円に値上げされ、同年10月にはなんと165000円にもなリました。手の込んだ魅力的な万年筆のようなのでこれで妥当なのかもしれないけれど、1年ちょっとの間に69000円も値上げされてしまうと、買う人をかなり限定したような感じがします。

値上げはパイロットに限らず、他のメーカーも行っているように、ここまでくるとやはりそういうことなのではないかと。そして、万年筆は、お値ごろなものはあるものの、最高モデルなどは超が付く嗜好品になっていくのではないかと考えてしまいます。
そう、さながら国産ウイスキーのように。

私のような庶民の万年筆ファンは今後どうすればいのか?

これはかなり辛い話で、今後私のような庶民はどうなるのかですが、これはもう本当に国産ウイスキー業界に似ているのではないかと思います。

手の届く範囲の万年筆を楽しむ人もいるだろうし、貯金をして憧れの万年筆を手にするものもいることでしょう。カスタムURUSHIはかなり高級とはいえ、サントリーの山崎や白州といったウイスキーのようにそもそも品物が出回ってないということもなければ手の出せない(一頃販売された山崎55年は300万円だった)高額な値段でもないので、買おうと思えばまだ買える価格です(簡単ではないけど)。中古市場を彷徨う人もいれば、デッドストックを探す人も出てくるはず。デッドストックを探す旅というのはかなり楽しそうだけど、そして、中には悲しいことに万年筆を諦める人も出てくるのではないか、と思っています。

万年筆は多くの人にとって、「特別な筆記具」「憧れの存在」になっていくのか?

これまでも、価格の面や使用する意味などから敷居の高さを感じている人も多かっただろう万年筆ですが、今後はより「特別な筆記具」「憧れの存在」になっていくのかな。正直、いち万年筆ファンとしては優越感がある一方、それ以上に寂しさを感じます。だっていつかは自分も簡単に買えなくなるかもしれないし、そもそも仲間が増えないかもしれないからです。

ただ、先にも記しましたが、まだ手の届くところに魅力的な万年筆がたくさんあります。のんびりしているとどんどん値上がりしていきそうなので、いま絶対に欲しいと思っている万年筆は近いうちになんとかして入手したいと思います。なんとかなるかな?

その後は、わからないですね。
貯金してなんとか頑張るのかもしれないし、もしかするともう買わない(買えない)かもしれない。私はお気に入りの万年筆で字を書くことが楽しいので、今欲しいと思っている万年筆を何本か入手したらもう満足できるかもしれない(できないかもしれない)けれど。

万年筆ファンを増やしていきたい!

いま風じゃない万年筆ですが、手軽に購入できて、誰もがその独特の魅力を楽しめる筆記具であって欲しいなと思いつつ、遅ればせながらかもしれないけど、万年筆ファンを広げるべくいろいろやっていこうと思う今日この頃です。

愛用の万年筆「DELTA DV」

-万年筆LIFE